【全部床義歯学】人工歯排列:全部床床義歯に与える咬合様式

部分床義歯やクラウンブリッジ症例では患者の元の咬合様式の再現を目指す。

しかし、全部床義歯に与える咬合様式は義歯が離脱しない咬合様式を与えることになる。

全部床義歯に与える咬合様式は、側方運動時の平衡側の咬合接触の有無によって2つに分類される。

分 類

①両側性平衡咬合〈バイラテラルバランスドオクルージョン〉
作業側、平衡側ともに咬合接触
 ・フルバランスドオクルージョン
 ・リンガライズドオクルージョン
 ・交叉咬合排列
 ・無咬頭歯による両側性平衡咬合

②片側性平衡咬合〈ユニラテラルバランスドオクルージョン〉
作業側のみが咬合接触し平衡側が離開
 ・リンガライズドオクルージョン
 ・モノプレーンオクルージョン

両側性平衡咬合

偏心咬合した時に、作業側・平衡側ともに咬合面が接触

フルバランスドオクルージョン

偏心運動時に作業側と平衡側が同時接触する咬合様式。接触する歯種や数に規定はない。

咀嚼初期では、作業側の負担のほうが大きい。しかし、咀嚼末期になると平衡側の負担割合が徐々に増える。そのため、義歯の安定化をはかるため、平衡側でも咬合接触する両側性平衡咬合が重要な役割をはたす。

・Gysi による咬合小面の形成によって構成される咬合様式。

・通常の無歯顎症例

リンガライズドオクルージョン

上顎舌側咬頭のみを咬合させる咬合様式。側方力を減少させるため義歯の維持安定を向上することができる。

咬頭嵌合位および偏心運動時の作業側はいずれも上顎頬側咬頭が離開。上顎舌側咬頭だけが下顎の歯と接触する。

この時、平衡側も咬合接触している場合は、両側性平衡咬合で考える。逆に平衡側が咬合接触していない場合は、片側性平衡咬合に含まれる咬合様式と考える。

・顎堤の吸収が大きく、義歯の安定(とくに上顎)が得られない症例

・交叉咬合排列の適応とされるような症例

交叉咬合

顎堤の吸収が大きく、歯槽頂間線と仮想咬合平面とのなす角が80°以下になった場合に採用される咬合様式。

上下の臼歯部の被蓋関係を逆にし、力学的な安定を目的とする。

無咬頭歯を用いた両側性平衡咬合

調節彎曲を用いた方法

顆路傾斜が小さい場合に用いられる咬合様式。無咬頭なので、クリステンセン現象によって起こる間隙を調節彎曲で補償する。

バランシングランプ法

無咬頭人工歯を平面に配列した場合に、前歯部と最後臼歯部後方に設置したランプ〈バランシングランプ〉によって保つ方法。

片側性平衡咬合

偏心咬合した時に、作業側が接触し、平衡側が離開している。

リンガライズドオクルージョン

側方運動時に作業側では、舌側咬頭が接触し、平衡側が離開する咬合。平衡側は離開するが、作業側に加わる力が側方圧が減少するため、義歯の安定が可能とされている。

リンガライズドオクルージョンを選択する場合、両側性平衡咬合とする場合と片側性平衡咬合とする場合がある。

モノプレーンオクルージョン

無咬頭歯を使用して単一の平面を形成する咬合様式。片側性咬合平衡を得るために舌側よりに配列する。