
齲蝕は齲蝕でも、エナメル質齲蝕と象牙質齲蝕ではその拡がり方が違うところ。一般的に、象牙質齲蝕は象牙細管から、エナメル質齲蝕はエナメル小柱に沿って拡がります。
今回は齲蝕でも、特にエナメル質齲蝕の拡がり方から病理像までみてきたいと思います。
国家試験や進級試験的にいえば、エナメル質齲蝕についての内容は、「齲蝕円錐」と「崩壊層・横線層・不透明層・透明層といった4つの層」はおさえておきたいところ。
エナメル質齲蝕についての内容は出題しやすいので、サラッとみておきたいと思います。
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齲蝕円錐の広がり

エナメル質齲蝕の拡大は、基本的にはエナメル小柱の走行と関係します。
顕微鏡で観察すると病巣は立体的で不規則な円錐形。そして、その円錐を特に齲蝕円錐と呼んでいます。
平滑面齲蝕では、エナメル質表面が円錐の底面、歯髄側が円錐の頂点となります。これに対して、小窩裂溝齲蝕ではエナメル質表面が円錐の頂点、歯髄側が円錐の底面となっています。
齲蝕の拡がりは、エナメル小柱の走行だけではなく、レッチウス条やエナメル叢、エナメル葉などによっても影響されていきます。
拡がり方は分かったので、次は実際にどういう病理像かをみていきたいと思います。
初期エナメル質齲蝕

エナメル質齲蝕では、初期齲蝕が重要。
初期のエナメル質齲蝕は、まだ齲窩が形成されていない状態です。
臨床所見は、平滑面で不透明な白斑や褐色斑、小窩裂溝部では褐色の着色としてみられます。
石灰化度の高いエナメル質表層と、その下の脱灰が進行した表層下脱灰層の二つに分けられます。
表層の高石灰化は、結晶の形態や性状から、一度脱灰を受けた表層エナメル質に唾液や食物などに由来するカルシウムイオンやリン酸イオン、フッ素イオンなどが浸潤し、新たな結晶が再石灰化したものと考えられています。
工ナメル小皮や獲得被膜の存在、高いフッ素含有量などの関与もあるという考え方もあります。
エナメル質齲蝕の病理組織像

齲蝕が進展すると、工ナメル質は表層部からしだいに崩壊。しかし、完全な崩壊に先立って深部ではさまざまな変化が起こります。
齲蝕円錐を標本でみてみると表層から深部に向かって、崩壊層・横線層・不透明層・透明層の4つの層に分けることができます。
① 崩壊層:エナメル質が完全に破壊されて顆粒状もしくは本来の構造を失っている層。
② 横線層:工ナメル小柱や工ナメル横線、およびレッチウス条が明瞭に観察される層。脱灰が起こっているため、脱灰層や病巣体部とも呼ばれています。
③ 不透明層:透過光により暗褐色にみえる層。軽度の脱灰で生じた空隙に小さな気泡が侵入したためと考えられています。結晶が溶けたことによって遊離した無機イオンが再沈着した場合も。
④ 透明層:病巣最深部で、透過光で明るくみえる層。構造の細部は見分けにくいです。一度溶け出した無機塩が正常な部分へ再沈着。慢性齲蝕では特に明瞭に観察されます。
まとめ
いかがだったでしょうか。エナメル質齲蝕についてはおそらくどの教科書も参考書もこのぐらいのレベルかとおもいます。さらに深めたい方は図書館で学術書を借りてみてください。
ただ、試験的にはそこまでかなと。。。
まず、齲蝕円錐は絶対。
「円錐の模式図をみせて正しいのはどれか」といった問題はとても作りやすいです。
その次に、エナメル質齲蝕の4つの層は必須です。そのまま、5択の選択肢にしやすいので。
といった具合に学習を絞ると時間も短縮できるかと思います。