
病態
導管細胞と筋上皮細胞が多様な形質を呈しながら増殖する腫瘍。唾液腺の細胞・組織に加えて、類骨様な様々な組織の形成がみられるため「多形」腺腫と呼ばれる。
症状
・緩慢な発育
・悪性化しなければ予後は良好
・無痛性の類球状で弾性硬、可動性の腫瘤がみられる。
・表面は平滑あるいは分葉状。
・神経症状(顔面神経麻痺)
耳下腺領域には顔面神経が走行しているため、増殖した腫瘍による圧迫で麻痺が生じる。
好発年齢・好発部位・頻度
・唾液腺腫瘍の中で最も頻度が高い(60%前後)
・30〜50代
・大唾液腺では、耳下腺(次が顎下腺)、小唾液腺では口蓋腺が好発。
・性差は少ないが女性にやや多い。
・小児の発生率は極めて低い。
検査所見
病理組織所見
・病理学的に多彩な像がみられる・
・腫瘍実質:腺管状胞巣構造、腫瘍性筋上皮細胞の増生(紡錘形、形質細胞様、明細胞など)、腺管上皮に扁平上皮化生がみられることもある(20 ~ 25%)。
・腫瘍間質:線維性結合組織や粘液腫様間質、軟骨様組織、硝子化結合組織などがみられる。
軟骨様組織などの間質の組織像が、他の唾液腺腫瘍との鑑別ポイント
画像所見
・T1強調MRIで低~中間信号
・T2強調MRIで中間~高信号
・造影エックス線写真では ballin hand 像
・唾液腺シンチグラムで99mTcO4−の異常集積はなく、欠損像になる。
治療
・摘出術:被膜を残さず全摘出を行う。また、骨吸収があれば骨削除を1層行う。
・摘出時に神経の損傷で顔面神経麻痺や舌運動麻痺、Frey症候群などが起こる可能性がある。
・まれに悪性化することがある(多形腺腫由来癌)
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