
国家試験的に困ることはないけど、モヤモヤが残る絶妙な箇所ってありませんか?
例えば、
「スプーンデンチャーと可撤保隙装置の違いは?」
「2・3壁性って結局なんなん?」ect…。
というわけで、今回は、そんなモヤモヤ系の中でも『リンガルプレートとリンガルエプロンの違い』をテーマに深堀りしていきたいと思います。
はじめに答えを言ってしまうと、リンガルプレートとリンガルエプロンの違いは…。
「歯に触れているかどうか」です!
たったそれだけ!それなのに、なぜモヤモヤが残ったりするのでしょうか。
この記事では、装置の構造的な確認と共に、そんなモヤモヤの正体についても触れていきます。少しでも今後の歯学部界隈で、リンガルプレートとリンガルエプロンの違いについて、悩むことがなくなれば幸いです。
※「常用歯科辞典 第4版(医歯薬出版株式会社)」を参考に記事を書いてます。
▼連結子の過去問はこちら▼
リンガルプレートとは

リンガルプレート
まずは定番な装置から確認。
リンガルプレートとは、下顎の舌側歯槽面を幅広く覆っている大連結子です。
リンガルバーと異なり、厚さが薄く、幅が広いのがリンガルエプロンの特徴。そして、なにより粘膜に接しているという点も際立って異なります。
適応症は舌小帯が歯頚部付近に付着している症例や、舌側の歯槽が滑らかな症例など。つまり、リンガルバーでは補うことのできない症例が適応になります。
リンガルエプロンとリンガルプレートの違いをあきらかにするためにも、上のイラストはよく見ておいてください。連結子が歯に触れていないと思います。
リンガルエプロンとは

リンガルエプロン
それでは、次はリンガルエプロンです。
リンガルエプロンとは、下顎残存歯の舌側面に板状の連結子が設定される下顎の大連結子です。
歯面の基底結節の一部を被覆するように設計されています。
適応症はリンガルプレートと同様にリンガルバーが適応できない症例。加えてリンガルエプロンの場合は、板状の連結子が残存歯の舌側まで延長しています。
したがって、残存歯の固定や前歯の歯間空隙の食品嵌入を防止したい症例などに適応可能です。
設計や適応症からわかるように、連結子が歯に触れているということがリンガルエプロンの特徴です。
リンガルプレートとリンガルエプロンが混在…??
それでは、改めて確認。
・リンガルプレートは「歯に触れない。」
・リンガルエプロンは「歯に触れる。」
端的にこれが違いです。
・・・。
えっ??
私たちが教科書などでよくみるリンガルプレートは、歯の舌側面まで伸びている写真なんだけど・・・。
そうです。それが、モヤモヤの正体ではないでしょうか。
つまり、リンガルプレートの広義と狭義の意味が混ざっているということです。
装置には各々の名称があるので、きっちりと分けると(狭義)、リンガルプレートは歯に触れていないもの、リンガルエプロンは歯に触れているものとなります。
しかし、広い意味(広義)でとらえると、板状の連結子は全部リンガルプレートであるという解釈もできます。むしろ、一般的な教科書などから広義の意味を採用していると思われます。
というのも、広く用いられている教科書などは下記のような記載の流れではないでしょうか。
②リンガルエプロンの説明
③装置の写真
装置の写真は、連結子が歯に触れているため、②の説明を読むと明らかにリンガルエプロンと推測できる。しかし、写真の下に書いてある説明では、リンガルプレートと紹介されている。
または、
②装置の写真(リンガルプレートとして紹介)
③捕捉説明としてリンガルエプロンを紹介
その③の捕捉説明を読めば読むほど、装置の写真はリンガルエプロンと推測される
このように、一般的な教科書などでは、紹介されている連結子の写真は明らかにリンガルエプロンなのに、リンガルプレートと説明書きがある。
これが、モヤモヤの元凶かと思います。
リンガルエプロンを説明する文章は加えるならば、写真を別々に載せてほしい。そうすれば、おそらくこのような混乱は起きなかったかのではないかと思います。
しかし、これは誤りではなく、広い意味でリンガルプレートを解釈しているため起こっている現象です。
なので、「本当ははっきり区別できるけど、リンガルエプロンをリンガルプレートの仲間として一緒にとらえることもできるんだな〜」と考えていただければ問題は解決するのではないでしょうか。
まとめ

さて、改めて、今回のリンガルプレートとリンガルエプロンの違いをまとめます。
①リンガルプレートは歯に触れない板状の連結子
②リンガルエプロンは歯に触れる板状の連結子
③各々装置に違いはあるが、リンガルエプロンをリンガルプレートの仲間としてとらえることもできる
国家試験ではリンガルプレートとリンガルエプロンの違いまでは、問われることはないと思うので安心していいかと。しかし、心配性な方は大学の先生や出版社に直に問い合わせてみてください。
素人vs専門家だと専門家に軍配があがります。しかし、専門家vs専門家だと専門のことが語れなくなることがあります。それは専門家同士のコンセンサスを得るのに時間がかかるからです。
なので、ふわっとした形で学習をすすめることも時としては吉ではないでしょうか。
これからも、集合知を作っていって無駄な悩みを省いていければ幸いです。
▼連結子の過去問はこちら▼
リンガルプレートは基底結節上まででリンガルエプロンは残存歯舌側面まででしょ
だからどちらも歯には触れますよ
ご質問ありがとうございます。
>リンガルプレートは基底結節上まででリンガルエプロンは残存歯舌側面まで
ということですが、基底結節が歯冠『舌側面』の歯頚部付近の膨隆部のことであるならば、
同じ舌側面を謳っているプレートとエプロンの違いはなんでしょうか?
ご質問の言葉をそのまま受け取りますと、エプロンが舌側面ということなので、基底結節も包括しているという考え方を取ると、リンガルエプロンの下位的なものとしてプレートが位置するということでしょうか?