
小児の臨実、特に外傷が苦手というお話をよく聞きます。
気持ちはとてもわかります。自分も学生時代の時はイミフでした(笑)
さらに、せっかく覚えた外傷の治療方針。本番では、まったく使えませんでした。
というわけで、今回は小児の臨実問題、特に外傷の範囲に関する勉強法についてお話したいと思います。
ほんの少しでも、暗闇から抜け出せていただければ幸いです。
▼参考までに過去問です▼
まずは優先順位をつける

「覚えることがたくさんある系」にいえることですが、まずは優先順位をつけるということがとても重要です。
というのも、私たちの脳は、複雑な情報を複雑なママで処理することは不可能だからです。(サヴァン症候群のような人は別でしょうが…。)
例えば、
口腔外科の症候群の勉強で、ダウン症候群の症状を全部覚えている人はいるでしょうか?
他にも、エナメル上皮腫について亜型まで勉強している人はいるでしょうか?
本当は、先天性外胚葉異形成症や骨形成不全症もたくさんの亜型があります。でも、それらは扱っていません。
このように、身近な例をあげても、私たちは複雑なものに優先順位をつけたり、単純化したり、理解しやすいように分類しています。
これは、私たちの無意識レベルが、使っているノウハウです。
なので、当然その優先順位を付けるという方法論は、小児外傷を勉強する際にも活かされます。
では、どこの内容が重要度が高いと見極め、勉強するのか?
それは、圧倒的に
幼若永久歯の外傷
だと思います。
ではなぜ、幼若永久歯の外傷なのか、そこのところをもう少し深堀りしたいと思います。
最初に幼若永久歯の外傷を勉強する理由

改めてですが、小児外傷で最初に手につけるのは、幼若永久歯だと思います。
なぜならば、
① 疫学的に頻度が高い
② わかりやすい
③ 大学間での解答にブレがすくない
という3つの理由からです。
疫学的に頻度が高い
まず、幼若永久歯の外傷は、疫学的に頻度が高いです。
最初の総論のところで勉強すると思いますが、永久歯外傷の好発年齢は7〜9歳。
つまり、これは言い換えると、幼若永久歯の外傷が多いということです。
これを忘れて、永久歯外傷(成熟した永久歯)への治療方針を勉強するのは、少し急ぎすぎかと思います。
一般的な教科書だと、幼若永久歯もまとめて、永久歯外傷の治療方針の中で語られます。
しかし、そうすると、認識が薄れてしまい、取り組むべき課題や解決策が見えづらくなります。
「木を見て森を見ず」の逆です。しっかり、木を見てください。
フォーカスすべきは、永久歯外傷の治療方針ではなく、幼若永久歯の治療方針です。
小児の歯内療法の臨実では、乳臼歯部が多い。それも、疫学的に咬合面がう蝕の好発部位だからです。こういった疫学的な観点からも、幼若永久歯の治療方針を優先的に勉強することはあながち間違っているとは言いづらいのではないでしょうか。
わかりやすくブレない治療方針
幼若永久歯の治療方針はわかりやすいです。
それはなぜかというと、幼若永久歯は病気になっても、「なるべく保存するような治療を行いたい」という一貫した考えがあるからです。
乳歯の場合は、最悪抜歯しても後に永久歯が萌出してきます。
しかし、幼若永久歯の場合は、抜歯や抜髄を行ってしまうと、その後の代わりがないという事態になってしまいます。
なので、歯髄も若いので、残せそうならその可能性にかけてみる。
このように、幼若永久歯の治療方針は理解しやすいです。
また、そういった理由だからこそ、各大学間でもブレは少ないかと思います。
乳前歯の根尖病変に対する治療方針は、抜歯をするのか、感染根管治療をするかで議論が多岐にわたりそうですが、それに比べたら先ほどの理由から、幼若永久歯の治療方針は炎上しにくいのではないでしょうか。
改めて、幼若永久歯の外傷を優先的に勉強する理由をまとめます。
・疫学的に頻度が高い
・治療方針がわかりやすい
・大学間での解答にブレが少ない
これで、少しだけでも幼若永久歯の外傷から学習を取り組む理由はわかっていただけたのではないでしょうか。それでは次にみていくのは、幼若永久歯に対する具体的な処置についてです。実際に問題として解かなければなりません。
幼若永久歯の治療方針

根が未完成な幼若永久歯。なので、そこを踏まえた治療方針です。
ポイントは2つだけ。
① 根の成長を期待=アペキソゲネーシス
② 萌出力を期待
それでは、一つ一つみていきます。
根の成長を期待
幼若永久歯の治療方針を考える際の1つ目のポイントです。
幼若永久歯の場合は根が未完の状態です。なので、歯冠が破折して仮に露髄したとしても、生活歯髄切断を行い、根の成長を期待するアペキソゲネーシスを狙います。
理由は2つです。
・予後が悪くても次の治療方針がある
・歯髄が若くて元気
当然、受傷した状況や歯冠の破折具合によっては、抜髄を疑うこともあるかと思います。しかし、そこで抜髄を選択した場合、当然ですが根は成長せずにアペキシフィケーションになるだけです。
根が成長しないで、根管充填する。歯冠歯根比が悪い状態で何年持つのでしょうか。
なので、先のことを考え、まずは生活歯髄切断にかけてみる。「歯髄も元気だし、アペキソができたらバンバンザイやんけ〜」ということになります。
抜髄もしくは感染根管治療は予後が悪くなってから考えても遅くはありません。
話はずれますが、よく鉄棒にぶつけたからきれいだとか、体育館だから汚いとか、受傷した場所で生切か抜髄か判断する話がありますが、私個人としてはまったくよくわからない理屈です。
細菌数とか調べた人いるのかな?一回は口の中水でゆすぎそうだけど。
口の中自体が汚いでしょう。病院来る間に汚れるでしょう。と思ってしまいます…。
余談でした(笑)
萌出力を期待
何度もいいますが、幼若永久歯は根が未完成です。
しかし、それが故に萌出力に期待するということもできます。
たとえば、外傷によって嵌入が起きてしまった場合、成熟した永久歯なら整復・固定が妥当かと思います。
しかし、根が完成していない幼若永久歯の場合は、萌出力を期待して経過観察も可能です 。
▼参考までに過去問です▼
このように幼若永久歯は以下のことを考え具体的な治療方針を狙っていきます。
① 根の成長を期待=アペキソゲネーシス
② 萌出力を期待
幹を作り例外という枝葉を付ける

というわけでまとめます。
・小児外傷(臨実)はわかりやすいものから勉強する
・幼若永久歯の治療方針は保存をベースに考える
もし、いきなり外傷の治療方針を覚えようとすると、パターンがたくさんありすぎて大変です。なので、今回のお話のようにまずは、しっかり理解しやすいものから手をつけてみてください。
「臨機応変に対応していく!」みたいなスタンスは、ブレない幹を作った後からでも遅くないと思います。
たとえば、幼若永久歯は歯髄保存ベースで考えると言いましたが、歯の歯冠が縦に割れていた場合、さすがに残すことは難しいでしょう。
他にも、受傷後に数ヶ月経過して、根尖病変ができていた場合は、流石にそれは感染根管治療です。
このように、少しイメージしただけでも、何通りの可能性が考えられます。実際に現実は何通りもの症例があるでしょう。
しかし、そういった現実感を想像していると、キャパオーバーになり本来勉強すべき箇所がわからなくなってしまいます。
物理学を初めて勉強する時は、いきなり空気抵抗とか摩擦を考えて勉強はしません。複雑な事象を単純なモデルに分解して勉強しているはずです。化学の電子の動きだって本当は、複雑です。あんな丸ポチで済む話ではないです。
なので、「初めはわかりやすいところから勉強する」というような優先順位をつけて勉強してみてはいかがでしょうか。症候群の症状も本来はたくさんありますが、主要なものから覚えていくといったように。
無限に考えられる外傷の可能性。ぜひ、今回の記事を参考に進めていただければと思います。
これからも、集合知を作っていって、無駄な悩みを省いていければ幸いです。
▼参考までに過去問です▼
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