
歯胚の形成時期に関して、なかなか苦手意識を持たれている方も多いかと思います。
そこで今回は、覚えるゴロを知らなかったり、応急処置的に対応したいという方向けの記事です。
①まずはシンプルにする。
②例題を解いてみる。
③応用してみる。
上の順番で進みます。
はっきり言って、そこまで神経質に数字は追わなくてもいいかと思います。
細かすぎて逆に、大事なところがみえなくなることも。
諸々をふまえて、この記事を読み終わっているころには、複雑な歯胚形成時期のお話がサッパリしているのではないかと思います。
ゴロで覚えている方はそのまま突き進んでください。
目次
まずは、シンプルにする

まずは、細かい数字の表を「シンプル」にしたいと思います。上記の表の画像をご参考ください。
無駄な数字を取り除いて、最低限は覚えて欲しいところを切り出した表です。
そこから少し捕捉説明を加えます。
乳歯の歯胚形成時期
最初と最後の時期を覚えて、間の数字は抜いていきます。
・歯胚形成開始:胎生7週〜〜胎生10週。
・石灰化開始時期:胎生4ヶ月〜〜胎生6ヶ月
・歯冠完成時期:生後1.5ヶ月〜〜生後11ヶ月
・萌出時期:生後8ヶ月〜〜生後2.5年
そして、歯根完成時期と歯根吸収開始時期はゴロを使って覚えます。
・歯根完成時期:一言一言に耳障りな2号さん。
・歯根吸収開始時期:仕事ないのはやっぱりヤーさん。
一言(1.5)一言(1.5)に耳(3)障りな2号(2.5)さん(3)。
仕(4)事(5)な(7)いのはや(8)っぱりヤ(8)ーさん。
「ここは覚えるのかよ」と思う人もいるかもしれません。
しかし、歯根完成から吸収開始時期の間を「歯根安定期」といって少し大事な時期です。なので、ゴロでもいいので、そのまま覚えておいた方がいいと思います。
例えば、歯根安定期が長い時期はどれかといった問題は作りやすいので。
最後の乳歯の脱落期は、永久歯の萌出時期に合わせていただければと思います。
それでは次は永久歯歯胚!
永久歯の歯胚形成時期
永久歯の歯胚形成時期は、最初の第一大臼歯と最後の第二大臼歯を覚えます。
・第一大臼歯:3の倍数。歯根完成は萌出時期+3年
・第二大臼歯:ゴロで、「くさいな〜やだな〜12歳臼歯、プラス3年」
く(9)さ(3)いな(7)〜や(8)だな〜12歳臼歯、プラス3年。
そして、出生時に何が起こっているかは重要です。なので、第一大臼歯とは別に、第二小臼歯の歯胚形成時期が出生時に起こることは覚えます。
というわけで、まずは乳歯と永久歯の歯胚形成時期をシンプルにしました。
それでは次に、シンプルにした表でも意識すべきポイントをみていきます。
ポイントをみてみる

最終的には、問題を解けることがゴールです。
なので、それに向けての意識すべきポイントをみていきます。
ポイント1:時期を意識する
さきほど歯胚の形成時期をシンプルなものにしました。そこからさらに、本質を削り出すと、大事なのは数字ではなく時期です。
例えば、乳歯の歯胚形成時期は「胎生〇〇週」とあります。ここで大事なのは、〇〇の数字の部分ではなく、「胎生」、そして「週」という時期のところです。
他にも、乳歯の石灰化開始は「胎生〇〇ヶ月」とあります。これも大事なのは、〇〇の部分ではなく、「胎生」であり、そして「月」です。
同様に、歯冠完成時期も「生後」、「月」が大事です。
わずかこれだけのことを知っているだけでも、問題の選択肢を切ることができます。
大事なのは数字ではなく時期です
ポイント2:永久歯は最初と最後
それでは、次は永久歯です。
永久歯の場合は、最初に萌出する第一大臼歯と最後に萌出する第二大臼歯を覚えてくれればと思います。
「えっ、じゃあ、側切歯や第二小臼歯はどうしたらいいの?」と言いたいと思います。
その場合は、第一大臼歯の萌出時期か、第二大臼歯の萌出時期に近いのかで選択肢を選んでもらえればいいかと思います。
例えば、第二小臼歯の歯胚形成時期が問われたとします。
そうした場合は、第二小臼歯の形成時期がわからなくても、下の画像のように第二大臼歯の時期に近い選択肢を選ぶということです。

まとめます。
・永久歯は最初の第一大臼歯と最後の第二大臼歯は覚える。
・出生時の箇所は絶対に覚える。
とうわけで、以上のポイントをふまえて、次は実際に問題を解いていきます。
実際に問題を解いてみる

それでは、国家試験の問題を少々。
正しい組合せはどれか。
a 乳中切歯萌出 ―――――― 生後2年ころ
b 第一乳臼歯歯冠完成 ――― 胎生32週ころ
c 第二乳臼歯歯根完成 ――― 生後3年ころ
d 第一大臼歯石灰化開始 ―― 胎生24週ころ
e 第二大臼歯歯胚発生 ――― 胎生40週ころ
いかがでしょうか。少しばかり捕捉解説を加えていきます。
まず、選択肢aは生後2年と書いてありますが、「生後8ヶ月」です。生後2年ぐらいだとさすがに乳歯列も完成へ向かってます。これは、言い過ぎ。
それから選択肢bは、胎生32週と書いてありますが、「胎生」と書いてある時点でバツです。歯冠完成は「生後」だからです。
選択肢dは胎生24週と書いてありますが、第一大臼歯はあの有名な「出生時」。
そして、選択肢eは胎生40週と書いてありますが、「胎生」と書いてある時点でバツです。第二大臼歯の歯胚形成時期は全部「生後」です。
というわけで、全部バツ選択肢で切って正解選択肢を選ぶ。答えはcになります。
ちなみに、選択肢cの第二乳臼歯歯根完成はゴロで覚えている箇所でもありますので、純粋に問題を解いても大丈夫かと思います。
このように問題を解く時にいちいち細かい数字を思いださないところがポイントとなります。
それでは、2問目です。
歯と石灰化開始時期との組合せで正しいのはどれか。
a 上顎乳中切歯 ―――― 胎生8~9週
b 下顎第二乳臼歯 ――― 胎生8~9か月
c 上顎第一大臼歯 ――― 6~7か月
d 下顎中切歯 ――――― 1歳~1歳3か月
e 下顎第二大臼歯 ――― 2歳6か月~3歳
それでは同様に、少しばかり捕捉解説を加えていきます。
乳歯の石灰化開始時期は、胎生4〜6ヶ月。
というわけで、選択肢abはバツです。特に選択肢aは胎生8~9週と書いてありますが、「週」という時点でバツ。石灰化開始時期は「ヶ月」です。
そして、選択肢cの上顎第一大臼歯はあの有名な「出生時」。すぐにバツにできるかと思います。
選択肢dはすぐに答えられないのでそのまま置いておきます。
選択肢eに関しては「ゴロで生後3年」と覚えたので、そのまま正解として選びます。
こんな感じで、時期やゴロ、バツ選択肢を選別して、正解選択肢を選び取ります。
勉強に余裕が無い方は、こんなふうに歯胚形成時期に触れてみるのはいかがでしょうか。
ちょっと応用してみる
ここからは、少しスピンオフ。
せっかく歯胚形成の話をしたので、少し知識を横へ広げていきたいと思います。
表層をめくる

そもそもこの赤丸の時期って何を意味しているのでしょうか。
実は、この歯胚形成から石灰化開始の間は、発生学的な側面からみると、蕾状期→帽状期→鐘状期(組織・形態分化期)→添加期・石灰化期を含んでいます。
歯の発生を組織学的にみていくと
蕾状期→帽状期→鐘状期(組織・形態分化期)→添加期・石灰化期→萌出期
と段階的に進むのはご存知かと思います。
簡単にいうと、
①細胞ができる(蕾状期・帽状期など)
②歯の「形」ができる(組織・形態分化期)
③歯の中身が作られる(石灰化)
④萌出する
「種」ができて「形」が作られ、「中身」が充実していくという流れです。
「種」ができるという蕾状期や帽状期に異常が生じれば、過剰歯や先天欠如などの大元の「数」に関わる異常が生じます。
また、「形」が作られるという組織・形態分化期に異常が生じれば、中心結節や基底結節といった形がおかしい歯が作られます。同様に、「中身」が成熟する時期の石灰化期がおかしくなれば、エナメル形成不全や象牙質形成不全といった異常が生じます。
(最近では、遺伝説がありますが、一旦置いときます。)
以上のことをふまえて、下の国試をみてください。
形態の異常
112D11
上頸右側中切歯の口腔内写真(別冊No.1A)、エックス線画像(別冊No.1B)及び歯科用コーンビームCT(別冊No.1C) を別に示す。



この異常が発生する時期はどれか。1つ選べ。
a 胎生2週〜胎生4週
b 胎生6週〜胎生3か月
c 胎生5か月〜生後2か月
d 生後4か月〜生後6か月
e 生後6か月〜生後1年
写真では中切歯の異常結節。つまり、発生段階としては歯の形態分化期に異常をきたした可能性が高いです。
つまり、歯胚形成の表でいうところ、

赤丸で囲まれた時期に異常が生じたと考えます。
そして、そこで問題を解く時も、冒頭でお話したシンプルな捉え方が活きてきます。
選択肢abが胎生〇〇週〜と書いてありますが、「週」と書いてある時点でバツです。
なぜなら、永久歯の歯胚形成時期は「ヶ月」からだからです。
また、選択肢deは生後〇〇ヶ月と書いてありますが、「生後」って書いてある時点でバツです。
「生後」ぐらいになると、石灰化が始まっているため、「歯の形態」に異常をきたすということが考えづらいからです。
このように考えると、残りは選択肢cしかなくなります。
これも、中切歯の異常結節が起こる細かい数字の時期を覚えておかなくても対処できる問題です。
石灰化の異常
他にも乳歯にフッ素症がないことも歯胚形成時期の本質を理解しているとわかります。
乳歯にフッ素症が稀なのは、フッ素が胎盤通過性が無いことに加えて、乳歯の歯胚形成から石灰化の時期が概ね胎生期で終わってしまうからです。
なので、生まれたばかりの赤ちゃんがフッ素をがぶのみし続けても、乳歯にフッ素症があらわれないということになります。
さらに、石灰化不全が起こった歯種や部位によって、障害が生じた時期まで予測することができます。
それは、少し長くなるので、次の機会にでも。
細かいことも大事ですが、本質を見落とさない。
本質を使って事象を横につなげていくことが学習の楽しみにも繋がります。
まとめ

最後にまとめます。
・歯胚形成時期はシンプルにして覚える。
・細かく覚えなければならないところはゴロで覚える。
・歯胚形成の知識を応用していく。
学生の方の中には、もうゴロで覚えている方もいらっしゃるかと思います。
そういった方はそのまま応用の方へ飛んでください。
まったく手をつけてない方は最低限は、冒頭にあったシンプルにした表ぐらいは覚えてもいいかと思います。
タイトルは歯胚形成の時期は覚えなくてよいということですが、言いたいことは本質を捉えて、横に知識をつなげていく。
このことが長期記憶に繋がりますし、学習を少しでも楽しくするためのコツではないかと思います。
これからも、集合知を作っていって、無駄な悩みを省いていければ幸いです。
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