
鋳巣(いす)とは、鋳物の内部に発生する空洞のこと。
引け巣やブローホール、ミクロポロシティなどの種類があり、それらを総称して鋳巣と呼ばれています。
今回は、そんな鋳巣の中でも引け巣についてみていきます。
鋳巣だの、引け巣だのなんだかごちゃごちゃしているところ整理し、しっかり原因を理解できれば幸いです。
固体になれば体積は収縮する

まず、鋳巣の原因をお伝えする前に、世の中の物質はどのように変化するのかを確認したいと思います。
物質の状態:気体・液体・固体
物質には大きく分けて3つの状態があります。それが気体・液体・固体の状態です。
物質は、目にはみえないような小さな粒(原子)で構成されています。
その粒がガシッと固まってほとんど動かないような状態が固体。
ちょっと粒が動いて、隙間ができているような状態を液体。
粒が激しく動き回っている状態を気体。
といいます。
・気体:粒が自由に動き回っている状態
・液体:粒がある程度自由に動ける状態
・固体:粒が規則的に固まっている状態
物質の状態変化
さらに、気体や液体、固体は温度によって状態を変化させます。
熱を加えると、固体→液体→気体
冷却すると、気体→液体→固体
と状態を変化させます。
水で例えてみると、冷やせば氷(固体)、熱を加えると溶けて水(液体)になり、さらに熱すると水蒸気(気体)になります。
・加熱:固体→液体→気体
・冷却:気体→液体→固体
状態変化によって変わる体積

体積とは、簡単にいうと物質の大きさのことです。
上の図からも分かるように、固体<液体<気体の順に大きくなっています。
金属もいままでの説明のように状態が変化して体積も変わってきます。ちなみに、金属以外にもワックスなども同じです。
普通であれば物質は、固体<液体<気体と変化するにつれて体積が大きくなります。しかし、水の場合は例外で、氷(固体)→水(液体)に変化すると体積が小さくなります。大学受験のときの知識ですね。
引け巣という鋳造欠陥

引け巣
それでは、物質変化の説明と合わせて、いよいよ鋳造欠陥の”引け巣”についてみていきたいと思います。
引け巣とは
まず、引け巣とは鋳物の内部に発生する複雑な形状をした空洞のことです。
一般的に引け巣が存在することで、引張り強さや伸びが減少します。そのため、脆く壊れやすくなってしまいます。
引け巣の原因

物質は固体から液体に変わる時に体積の収縮を起こします。
体積の収縮は金属も例外ではありません。鋳型の中に入れられて溶けた金属は、時間が立つと凝固収縮し、体積を減少させます。
この体積の減少によってできた空洞が引け巣となります。必然的に金属が最後に凝固するところにできやすくなるということです。
もう少し、具体的にします。

鋳型はドロドロに溶けている金属より温度は低いです。例えばコバルトクロム合金の溶解温度が1300〜1500℃以上に対してその鋳型は700〜1000℃くらいに保ちます。
そんな温度が低い鋳型に、ドロドロに溶けた金属を流し込むとどうなるか。当然、金属は鋳型と接する部分から凝固が始まります。
そうすると、順々に凝固していった金属はだいたい肉厚のある中心部付近が最終凝固となり、引け巣という形で空洞が出来上がるわけです。
鋳巣の対処

湯溜まり
それでは、引け巣を防止するためにどうするか。
それは、最終凝固部を鋳造体の本体以外の部位に生じさせることです。
つまり、湯だまりの設置です。他にも代用として太いスプルー線を用いることでも可能です。
引け巣そのものをなくすことは物質の性質上難しい。なので、大事な部分に引け巣をつくらないように誘導してあげるというわけです。
まとめ

最後にまとめます。
・金属は液体から固体の際に収縮する。
・最終凝固部に収縮した分の体積が孔としてでき、それを引け巣という。
・対策は最終凝固部を中心部からづらす湯溜まりを設置する。
いかがだったでしょうか。普段何気なくみている金属収縮という単語さえもこういった局面で役に立つ知識です。
まずは、鋳巣と引け巣の言葉の意味を整理するところから勉強するのもいいかもしれません。
どうぞ、素敵な学習ライフをお送りください♪
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