臨床実地問題を解く時、問題文には実に多くのヒントが書かれています。しかし、その文章には必ずしも自分が欲しいヒントが書かれているとはかぎりません。
インピーダンス値が書いてあれば露髄の有無はわかるのに・・・。エックス線画像から露髄を読み取るのは自信がないな・・・。電気診かいてくれればすぐわかるのに!などなど。

そこで、今回は小児の歯内療法を通して、問題文にヒントがなくても歯が生きているか死んでいるかを見極めるなど、正しい治療方針を選択できるようになりたいと思います。
歯内療法におけるフローチャート病はおさらばです!
病気の進み方を考える!
※以下歯周病、上行性歯髄炎などの可能性は考えてないです。
歯に関する病気の進行は、齲蝕ができて、歯髄炎になり根尖病変ができるということが一般的な進み方だと思います。
(いっけん当たり前のことを言ってますが、とても重要なことで過去問ばっかり解いていると忘れがちです。)

上から下へと病気が進むということを念頭におくと。
歯髄炎になっているということは、齲蝕にはなっているということを暗に意味してますよね。
また、根尖病変になっているということは、もうすでに歯髄炎になっていたということを暗に意味してますよね。
では、歯肉などの歯周組織に炎症が波及しているということはいったいどういうことを意味しているのでしょうか?
もう、お分かりだと思いますが、
歯周組織まで炎症が及んでいるということは、それはさすがにもう歯髄は死んでいるということです。
細菌感染が、歯髄を通り越して、根尖外へ波及し、歯肉の粘膜まで達し、発赤が出ているにもかかわらず、それで歯髄が生きているということは、さすがに考えづらいということです。

上の写真では粘膜が真っ赤です!これぐらいまで、炎症が波及していたら、さすがに間接覆髄法や生活歯髄切断法の議論なんて微塵も出ないですよね。
実際の問題文には歯肉の腫脹や歯肉の圧痛、口腔内所見には歯肉粘膜の発赤などで表現されてきます。
それでは実際に過去問をみながら確認していきましょう!
過去問
97B20
5歳の女児。下顎左側乳臼歯部の疼痛を主訴として来院した。1か月前から時々疼痛を訴えていたが、昨夜は強い痛みのためほとんど眠っていないという。「E の頬側歯肉に圧痛があり、動揺度は1度である。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。
適切な処置はどれか。1つ選べ。
a 歯髄鎮痛消炎療法
b 生活歯髄切断法
c 抜髄法
d 感染根管治療
e 抜 歯
解答&解説
◯d:選択肢には鎮静法や生活歯髄切断法が出てきますが、問題文から「E の頬側歯肉に圧痛がありなど、細菌感染に伴う炎症は、歯髄の域を通り越して歯周組織まで波及してます。もしも、歯髄内だけに細菌感染が及んでいたなら歯肉の圧痛なんておこらないはずです。というわけで歯髄が死んでいると見切りをつけて感染根管治療を選択するということになりますね。根尖病変や骨の吸収などもさほど大きくないので、抜歯まで選択することはないですね。
99B20
5歳の女児。頬部の腫脹と疼痛とを主訴として来院した。2日前から夜間痛と咬合痛とがあるという。顎下リンパ節に圧痛がある。初診時の顔面写真、口腔内写真およびエックス線写真を別に示す。
まず行う処置はどれか。1つ選べ。
a 直接覆髄法
b 生活断髄法
c 抜髄法
d 感染根管治療法
e 抜 歯
解答&解説
◯d:主訴が頬部の腫脹と疼痛です。この時点の歯髄が生きているか死んでいるかを気にする次元ではないですね。さらに、口腔内所見からも粘膜が真っ赤です。というわけで、答えは感染根管治療のdでいいのではないでしょうか。根尖病変や骨の吸収などもさほど大きくないので、抜歯まで選択することはないですね。
まとめ

いかがだったでしょうか。検査所見はとても大事ですが、そればっかりにとらわれていると、本質を忘れがちです。
仮にですが、波動が触れたというワードがなくても、3日前から腫脹し、粘膜の腫れている所見ならば、急性炎症で切開必要かな?などなど、判断しなければなりません。
最近の国家試験の傾向を考えると定番のフローチャート病からさよならすることもいいかもしれませんね!
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