歯周組織の膿瘍(2019年12月27日更新)【歯周病学】



歯周組織において膿瘍の形成部位により、歯肉膿瘍と歯周膿瘍にわけることができる。また、膿瘍には急性と慢性があるが、下記では特に急性を扱う。

歯肉膿瘍

辺縁歯肉や歯間乳頭部に生じる限局性の化膿性感染。

特 徴

・外部からの機械的刺激その外傷歯肉部に細菌感染が生じ、歯肉組織に膿瘍が形成。

・歯周ポケットの有無にかかわらず生じる。

症 状

・歯肉の発赤や浮腫、膿瘍部からの排膿

・打診痛や歯肉部の圧痛

・ときには歯の動揺もみられる

処 置

・切開排膿

・症状の程度により、抗菌薬や抗炎症薬の投与、口腔内の含嗽

歯周膿瘍

真性ポケット周囲組織内の限局性の化膿性感染。

原 因

主な原因はポケット内の細菌による感染。以下のような環境で発症しやすい.

① 深くて複雑な歯周ポケットの存在部位
② 深くて複雑な歯周ポケットを有する根分岐部
③ 外傷性咬合の影響を受けやすい根分岐部あるいは根尖部
④ 糖尿病のような全身の抵抗力の低下をきたす全身疾患がある場合 

症 状

・歯肉の腫脹、発赤、波動がみられる。

・歯肉の腫脹部を圧迫すると疼痛を訴え、ポケットから排膿がみられる。

・咬合痛、咀嚼時痛

・病変の進行程度では頬部、所属リンパ節の腫脹もみられる。

・重篤な場合は、開口障害などもみられる。

処 置

排膿路の確保や膿瘍内部の圧の軽減が必要となる。

① 膿瘍が歯肉辺縁に近い場合

・ポケット内にスケーラーを挿入し、膿瘍部の掻爬。

・徹底した洗浄で膿瘍の内容物をポケットから排出させる。

② 膿瘍が歯肉辺縁から離れている場合

・膿瘍底部まで切開を行い、排膿を行う。

・切開部位には十分な洗浄。

排膿路の確保と同時に、必要に応じての抗菌薬や抗炎症薬、洗口剤の投与を行う。ときには局所薬物配送システも(LDDS)も応用する。



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