医の倫理については、医師が患者を尊重するという職業倫理と、人体実験の反省に基づき患者の人権を尊重するという医学研究の倫理があります。
上の表は宣言を便宜的にまとめた表になります。
各項目の詳細に関しては目次からお願いします。また、必要に応じて原文から抜粋していますが、詳しくお読みになられる方は原文のリンクを貼りますのでそちらから閲覧ください。
ヒポクラテスの誓い

・古代ギリシャの医師であるヒポクラテスが医の倫理について宣誓したものです。
・歴史上もっとも古いと伝えられてます。
・この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わが財を分かって、その必要あるとき助ける。
・その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。そして書きものや講義その他あらゆる方法で私
の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとづき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
・私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
・頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
・純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
・結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするものに委せる。
・いかなる患家を訪れる時もそれはただ病者を益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。
・女と男、自由人と奴隷の違いを考慮しない。
・医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る。
・この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい。
ヒポクラテスの誓いは現代の倫理感でも通じる内容が書かれています。人権思想、安楽死、プライバシーの保護、師弟関係など。特に冒頭に師弟関係の話が書かれ、ヨーロッパでも中国の儒教思想に近い内容が興味深いです。もしかしたら、人類普遍の感情のあり方なのかもしれません。
ジュネーブ宣言(1948年)

・医師の職業倫理に関する宣言です。現代版のヒポクラテスの誓いとも言われています。
・人類の貢献や秘密保持はもちろんのこと、患者の非差別や悪意ある医学知識の応用を禁止している内容です。
・私は、人類への奉仕に自分の人生を捧げることを厳粛に誓う。
・私は、私の教師に、当然受けるべきである尊敬と感謝の念を捧げる。
・私は、良心と尊厳をもって私の専門職を実践する。
・私の患者の健康を私の第一の関心事とする。
・私は、私への信頼のゆえに知り得た患者の秘密を、たとえその死後においても尊重する。
・私は、全力を尽くして医師専門職の名誉と高貴なる伝統を保持する。
・私の同僚は、私の兄弟姉妹である。
・私は、私の医師としての職責と患者との間に、年齢、疾病もしくは障害、信条、民族的起源、ジェンダ、国籍、所属政治団体、人種、性的志向、社会的地位あるいはその他どのような要因でも、そのようなことに対する配慮が介在することを容認しない。
・私は、人命を最大限に尊重し続ける。
・私は、たとえ脅迫の下であっても、人権や国民の自由を犯すために、自分の医学的知識を利用することはしない。
ニュルンベルグ綱領(1947年)

・ナチスの人体実験の反省から被験者の人権保護について述べられたものです。
・インフォームドコンセントの必要性を初めて示したもので、ヘルシンキ宣言へ繋がっています。
・内容は医学研究をする際、被験者へ詳細な説明の必要性や自発的同意、傷害や死亡する可能性がある場合の中止などが書かれています。
政策や方針などを示したものです。ニュルンベル綱領の翻訳されたものを読みたい方はこちらのサイトへ
ヘルシンキ宣言(1964年)

・ ヒトを対象とする医学研究の倫理や臨床研究、臨床試験における被験者の人権を優先することが述べられています。
・1964年にフィンランドのヘルシンキで行われた第18回世界医師会総会で採用されました。
・大まかな内容の要約は以下になります。
① 患者や被験者の利益を尊重すること
② 本人の自発的・自由意志による参加
③ インフォームドコンセントの取得
④ 倫理審査委員会の存在
⑤ 科学的に妥当な医学研究であること
⑥ プライバシーと秘密保持
⑦ プラセボの使用
・ヘルシンキ宣言は何度も修正され、最近では2013年のブラジル総会で修正されました。最新のヘルシンキ宣言はこちらです。
リスボン宣言(1981年)

・患者の権利に関する宣言です。インフォームドコンセントや尊厳死に関して書かれています。
・第34回世界医師会総会(リスボン)で採用されました。
・大まかな内容の要約は以下になります。
① 良質の医療を受ける権利
② 選択の自由の権利
③ 自己決定の権利
④ 意識のない患者でも代理人を立てること
⑤ 法的無能力の患者でも代理人を立てること
⑥ 患者の意思に反する処置
⑦ 情報に対する権利
⑧ 守秘義務に対する権利
⑨ 健康教育を受ける権利
⑩ 尊厳に対する権利
⑪ 宗教的支援に対する権利
リスボン宣言の全文はこちらです。
シドニー宣言(1968年)

・死に関する声明です。臓器提供者における死の判定などについて述べたものです。
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