【口腔外科学】先天異常:口蓋裂・粘膜下口蓋裂



口蓋裂とは二次口蓋の癒合不全。特に不完全口蓋裂といい、「口蓋裂単独」とも呼ばれている。

不完全口蓋裂の一方で、完全口蓋裂とは一次口蓋と二次口蓋に由来する口蓋裂である。

歯槽から軟口蓋まで破裂し、ほとんど口唇裂を伴っていることから破裂形態は唇顎口蓋裂である。

参考となる過去問はこちらから

原因

発生原因の概要は唇裂の記事に記載。

口蓋裂の発生には舌の位置が関与している。

胎生7週ぐらいで左右の球状突起と上顎突起が融合し一次口蓋が形成。

その後、左右の口蓋突起が発生して二次口蓋を形成される。

しかし、二次口蓋が成長過程で舌が上方へ位置すると二次口蓋の形成を妨げ、口蓋裂の発生につながる。

疫学

・男児<女児

・両側性<片側性

・右側<左側

女児に多い理由

口蓋裂単独において、女性の方が口蓋突起の挙上時期が遅れていると考えられている。しかし、真因は不明。

分 類

・不完全口蓋裂:二次口蓋の癒合不全。

・完全口蓋裂:一次口蓋と二次口蓋の癒合不全。

・片側口蓋裂:一側の硬口蓋と鼻中隔は結合するが他方は結合しない。

・両側口蓋裂:両側の硬口蓋が鼻中隔と結合していない。

粘膜下口蓋裂

不完全口蓋裂の一つ。軟口蓋を形成する口蓋帆張筋や口蓋帆挙筋の連続性が消失している。

・口蓋正中部の粘膜透過性←軟口蓋の筋肉の欠損のため

・口蓋垂裂

・硬口蓋後方端のV字状欠損または後鼻棘の消失←口蓋骨の形成不全のため

といった3つの症状を特徴とし、Calnanの3徴候と呼ばれている。

症状が軽微なため、構音障害がみられる学童期になって遅れて発見されることが多い。

治 療

おもに口蓋形成術が行われる。

目的は良好な鼻咽腔閉鎖機能をもつ口蓋を形成し、正常な言語を獲得すること。

手術時期の目安

・ 1歳~2歳ころ。←言葉を話しはじめる時期のため

・体重は10 kg 以上を目安。

・ 口蓋形成術の気管挿管は経口挿管で行う。←鼻腔内に気管チューブがあると手術操作の妨げとなるため。

手術法

1回法

術式の種類

Wardill法:口蓋の後方移動を同時に行う。

push back 法(口蓋弁後方移動術):代表的な手術で、筋肉を再建しつつ軟口蓋の粘膜骨膜弁を後方に移動する術式。鼻咽腔閉鎖機能は向上するが上顎骨の発育不全が起こりやすい。

von Langenbeck 法:単純に硬口蓋を閉鎖する術式。硬口蓋の粘膜骨膜を骨から剥離して正中に移動させ閉鎖する。口蓋は後方移動しないため鼻咽腔閉鎖機能は不十分。

Furlow法:軟口蓋の口蓋側と鼻腔側に相対するZ型の切開を行って、破裂部の閉鎖を行う術式。顎発育への影響が少なく筋肉の再建も可能。

2回法:軟口蓋と硬口蓋の閉鎖を口蓋の発育に合わせて2回行う。

術式の種類

Perko 法:口唇口蓋裂の一貫治療のなかで行われる2段階手術。1歳6か月時に軟口蓋裂の手術を行う。その後、硬口蓋の破裂を縮小させ、5歳以降に硬口蓋形成術を行う。



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