髄室開拡(2019年12月30日更新)【歯内療法学】



髄室開拡(髄腔開拡)は根管処置に先立って、歯冠歯髄腔を開放して根管に器具を到達させるための経路を確保する操作である。アクセス商洞形成やアクセスオープニングともよばれる。髄室開拡の不備は、以後の器具操作の確実性や効率の低下につながる。

髄室開拡の要件

器具を円滑に挿入できる形態確保

器具の挿入を妨げるエナメル質や象牙質の削除を行い、直線的な挿入経路を確保する。過剰切削により根管口付近にステップ状の形態が形成された場合も、根管への器具挿入が困難となる。

天蓋の十分な除去

残存させた場合は根管口の上部に張り出した象牙質が残り、器具の挿入が妨げられる。また、天蓋の直下に存在する歯髄組織などの除去も不完全となるため、天蓋は十分に除去する。

すぺての根管口を窩洞に含める

咬合面からみて、すべての根管口が窩洞内に観察される程度に窩洞外形の拡大および天蓋の除去を行う。

直線的な挿入経路の確保

窩洞側壁から根管上部までを直線的に形成すると、器具を窩洞側壁に沿わせながらスムーズに根管口に挿入できる。この状態が確保されると、咬合面からみると根管口が窩洞の最も外側に位置する。

歯髄腔の形態に合わせて窩洞形態の設定

髄室開拡の窩洞外形は、咬合面からみた髄室の形態におおむね似ている。口腔内では近心方向から処置が行われるため、大臼歯では近心壁はやや外開きにする。

う蝕の完全除去や窩壁の整理

髄室開拡を終えるまでにう蝕を完全に除去する。また、遊離エナメル質や薄い歯質を削除して窩壁を整理する。

術 式

窩洞の概成

・高速ハンドピースに装着したダイヤモンドポイントを用い、注水下で歯冠外形の中央部付近を起点として切削する。

・窩洞外形はおおむね歯冠外形に似ている。

歯髄腔への穿孔

・歯髄腔の広がりが大きい部位を目標に歯髄腔に穿孔する。

・歯髄腔が広い場合は、穿孔と同時に切削中の抵抗感が軽くなる。抜髄症例では露髄部からの出血で確認もできる。

・歯髄腔が狭窄した歯では、直探針などの先端が鋭利な器具で穿孔部を探索する。

天蓋除去と根管口の確認

・歯髄腔への穿孔部に回転切削器具を挿入し、広げながら天蓋を除去する。

・残存する天蓋の確認には有鉤探針が有用。

・スチールラウンドバーによる掻き上げあるいはダイヤモンドポイントの側面を用いた切削により除去する。

・髄床底には根管口をつなぐ黒い線状がしばしば観察されため、根管口探索の指標となる。また、髄床底が天蓋よりも暗い色調を示すことも目安となる。



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