根管長測定(2020年1月6日更新)【歯内療法学】



根管長測定

根管長測定

根管長測定法は、生理学的根尖孔の位置を検出する方法。咬頭頂などの基準から生理学的根尖孔までの距離を求める。根管充填の確実性を得るために極めて重要である。

生理学的根尖孔が採用される理由は根管の最狭窄部であるためである。そのため、歯周組織の創傷面積や根管充填材の歯周組織に対する接触面積が最小になる。

生理学的根尖孔

・生理学的根尖孔は解剖学的には根尖部の象牙セメント境と一致する。

・根尖歯周組織と歯髄との境界部に相当。

・歯根表面の根管開口部である解剖学的根尖孔から0.5〜1mm歯冠側に位置する。

作業長の決定

・作業長とは根管切削器具を実際に操作する長さのこと。

・根管長測定法で得られた値より1mm前後短い数値がよく作業長として採用される。

根管長測定法で得られる値が、実際の生理学的根尖孔をわずかに越えるため。

・作業長は歯冠部の計測基準点からの距離として求められる。切縁や咬頭頂など再現性の高い位置に基準点を設定する。

・根管上部のフレアー形成で、彎曲が直線化して根管長が短縮すること考えられるため、 フレアー形成終了後に作業長の決定が好ましい。

根管長測定の方法

エックス線写真を利用する方法

・画像の伸縮を比例計算で補正して歯根の実長を求める方法。

・既知の長さがわかる測定針(ファイルやガッタパーチャポイントなど)を根管内に挿入した状態でエックス線写真を撮影。

エックス線写真では生理学的根尖の位置を厳密に検査することはできない。したがって、エックス線写真上で計測した上で、1 mm前後短い長さを作業長として採用する。

電気的根管長測定法

電気的根管長測定器を使用する方法。根管内にファイルを挿入した状態で弱い測定電流を通電。インピーダンスを測定して根尖狭窄部の位置を検出する。

基本原理

ファイル先端が歯根膜に達するとファイルと口腔粘膜との間のインピーダンスがほぽ一定の値を示すことを利用。

手順

① ストッパーを装着した細いファイル、および口角に設置した金属製電極(排唾管など)を測定器に接続。

② 根管に挿入されたファイルを根尖指示値を示すまで根尖方向に進める。

③ 咬頭頂などを基準とし、そこにストッパーの位置を固定。

④ ファイルを根管から取り出し、先端とストッパーとの距離を計測する。

⑤ 得られた長さから1mm前後短い長さを作業長とする。
(機種により作業長決定法は異なる場合がある。)

注意点

① 根管内が乾燥した場合は、電流が流れず測定できないことがある。

② 根未完成歯や根尖吸収歯などは根尖が開大してしているため短い測定値を示すことがある。エックス線写真による方法との併用が望ましい。

③ 測定電流が唾液を経由して歯肉に漏洩した場合は短い測定値が得られる。そのため、確実な防湿が需要である。

④ 再根管治療の症例では根管充填材で絶縁され測定困難な場合がある。

⑤ 金属製修復物を除去せず歯内治療を行う場合は,金属を経由した電流の漏洩に注意が必要である.

⑥根管壁の穿孔が存在する場合は穿孔部までの長さが測定される。したがって、電気的根管長測定器が穿孔の診断に用いることも可能となる。

その他の測定法

電気的根管長測定の誤差をある程度補える場合と考える。

歯の平均長を利用する方法

平均長と大きく異なる測定値が得られた場合は、エックス線写真も参照し、測定値の採否を検討する。

手指の感覚を利用する方法

手指の感覚で根尖狭窄部を触知しようとする方法。測定値の正誤に関する判断が得られる場合もある。

患者の感覚を利用する方法

ファイルが根尖歯周組織に接触した際に患者に生じる痛覚を指標とする方法。



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