
第95回から第113回歯科医師国家試験の結合組織に関する出題の中でも頻出のコラーゲン。
今回はそんなコラーゲンを構造から種類、合成過程の3パートでみていきたいと思います。
出題内容からも各パートのポイントは以下になると思います。ご参考までに。
①コラーゲンの構造
:コラーゲン分子やα鎖など単語がどいったものかを理解する
→生化学を復習する上で、単語に慣れることは敷居を下げるため
②コラーゲンの種類
:コラーゲンⅠ型やⅣ型は組織のどこに存在しているかを覚える。
→出題されるパターンとして多いため
③コラーゲンの合成過程
:ヒドロキシ化されるタイミングや必要な栄養素など
→栄養の欠乏によって歯肉出血がみられるという口腔領域に関わるため
▼参考となる過去問はこちら▼
コラーゲンとは

コラーゲン
コラーゲンは、哺乳類動物で最も存在量が多いタンパク質です。
体にあるタンパク質の約30%も占めます。
皮膚や骨、軟骨、歯などの線維成分であるだけでなく、肝臓や肺などあらゆる器官に存在しています。
また、生活の中では、皮製品やコラーゲンの変性物であるゼラチンの食品、写真フィルムなど幅広く人々に利用されている天然材料です。
コラーゲンの構造(Ⅰ型コラーゲン)

コラーゲン線維
まず、皮膚をめくって結合組織をのぞくと、光学顕微鏡レベルでみえる太い糸のようなものがみえます。
この太い糸のようなものがコラーゲン線維です。世間一般で言われている「コラーゲン、コラーゲン」というのはコラーゲン線維のことを指しているかと思われます。
この太い糸のようなコラーゲン線維は、さらに細い糸で集まって出来ています。
その細い糸のようなものがコラーゲン原線維。
コラーゲン原線維はコラーゲン分子が集まって出来ています。
さらに、コラーゲン分子は3本のα鎖(ポリペプチド鎖)がらせん状の構造で形成されています。
各α鎖のアミノ酸配列は3つごとにグリシンが存在しているため、一般的には(グリシン-X-Y)nとして表されます。
そして、Xの位置にはプロリン、Yの位置にはヒドロキシプロリンであることが多いです。
コラーゲンの種類
コラーゲン分子はすべて3本のα鎖から構成されています。
このα鎖はアミノ酸の配列によって約43種類以上あることが知られ、α鎖によってコラーゲンⅠ型やⅡ型といったような種類が決められてきます。
いまでは、コラーゲン分子は約27種類の分子型が発見されています。
コラーゲンの種類を大まかに分けると、繊維性の特徴を示す繊維形成コラーゲンや基底膜下で網目状構造を示す基底膜コラーゲン、線維性コラーゲンの成長に関わるファシットコラーゲンなどに分けることもできます。
国家試験的に重要なのはⅠ型、Ⅱ型、Ⅳ型になります。
Ⅰ型:最も豊富な型で、骨や皮膚象牙質など分布。
Ⅱ型:軟骨基質を中心に分布する。
Ⅲ型:Ⅰ型と共存することが一般的。
Ⅳ型:基底膜を構築するコラーゲン。
TWなどもご参考にください。
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👩⚕️『#コラーゲン』🥓ーーーーーーーーー
👄 歯肉:Ⅰ型(Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ型)
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🥕 歯根膜:Ⅰ型(Ⅲ,Ⅳ型)
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🦴 歯槽骨:Ⅰ型
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🌽 セメント質:Ⅰ型(Ⅲ型)
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🩹 基底膜:Ⅳ型
ーーーーーーーーー— DENTAL YOUTH/歯科医師国家試験/CBT/歯学部向け個別指導塾 (@DentalYouth) May 18, 2020
コラーゲンの合成過程

コラーゲンの合成
次はコラーゲン分子がどのように合成されるのかをみていきたいと思います。
合成されるまでは3つのステップを踏みます。(別に3つでなくてもいいです。)
細胞内・外でいくつかの酵素の関与をもとで、さまざまな修飾反応を受けていきます。
α鎖の合成から修飾反応
まず、コラーゲン分子のもとになるα鎖が小胞体膜に結合したリボソームから合成されます。
合成されたα鎖はリボソームのなかで、水酸化やグリコシル化といった修飾反応を受けます。
特に、グリシンーXーYの繰り返し構造のうち、Yの位置のプロリンおよびリシンがそれぞれ小胞体の中で水酸化されて、ヒドロキシプロリンまたは、ヒドロキシリシンになります。
そして、この反応にはビタミンCが必要です。
もし、ビタミンCが欠乏すると、コラーゲンが形成されず、壊血病といった疾患を引き起こします。
ビタミンC欠乏によりコラーゲンの形成障害が起こる疾患。血管壁が脆弱化し、血管の透過性が亢進する結果、出血傾向をきたします。
・歯肉の腫脹、出血
・皮下出血(下肢に多い)
・出血時間の延長
・毛細血管抵抗性試験の陽性
などがみられます。
プロコラーゲン分子の形成から分布
3本のα鎖のC末端にS-S結合が生じ、ふんわりα鎖の位置関係が決定します。
そして、ヒドロキシプロリンの水酸基がペプチド間に水素結合をつくり、3本鎖のらせん構造が形成されます。
N末端やC末端がまだ残っている状態で、3本のα鎖によってらせん構造を呈しているものをプロコラーゲン分子と呼びます。
形成された小胞体中のプロコラーゲン分子は、ゴルジ体に移行して分泌顆粒を形成。
その後、エクソサイトーシスによって細胞外に放出されると考えられています。
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👩⚕️『#N末端 と #C末端』🥓アミノ酸のアミノ基(NH2)とカルボキシ基(COOH)からペプチド結合し、タンパク質が生成されます🙆♀️
左端はアミノ基が、右端はカルボキシ基が位置し、それぞれをアミノ末端(N末端)、カルボキシ末端(C末端)といいます💇♀️#歯科国試 #生化学 pic.twitter.com/8j0YJHf6dI— DENTAL YOUTH/歯科医師国家試験/CBT/歯学部向け個別指導塾 (@DentalYouth) May 17, 2020
プロコラーゲンからコラーゲン分子へ
細胞外に分泌されたプロコラーゲン分子は、酵素(プロコーゲンN-プロテアーゼとプロコラーゲンCプロテアーゼ)によってC末端とN末端が切断。
このように枝毛を整えられたものがコラーゲン分子となります。
その後、コラーゲン分子は隣り同士約1/4ずつずれて配列し、架橋構造によって結合し、コラーゲン繊維になります。
この各配列のコラーゲン分子間の隙間は骨や象牙質の石灰化の際に重要な役割を果たしていると考えられています。
コラーゲン分子のリシン残基の一部がリシルオキシダーゼの作用で脱アミノ反応を受け、アリシンと呼ばれるアルデヒドが生じます。このようにして生じたアリシンが、他のアリシンとの間で生じるアルドール縮合や他のリシン残基との間で生じるSchiff(シッフ)塩基形成を介して、コラーゲンの分子内および分子間での架橋結合を生じます。
コラーゲン分子のリシンの一部がリシルオキシダーゼにより脱アミノ反応を受けアリシンとなります。このアリシンが他のアリシンとの間で生じる結合です。
リシンとアリシンの間で生じる結合。
まとめ
最後にもう一度まとめのポイントを載せておきます。
①コラーゲンの構造
:コラーゲン分子やα鎖など単語がどいったものかを理解する
→生化学を復習する上で、単語に慣れることは敷居を下げるため
②コラーゲンの種類
:コラーゲンⅠ型やⅣ型は組織のどこに存在しているかを覚える。
→出題されるパターンとして多いため
③コラーゲンの合成過程
:ヒドロキシ化されるタイミングや必要な栄養素など
→栄養の欠乏によって歯肉出血がみられるという口腔領域に関わるため
これらのことを確認しながら過去問なども解いてみてください。
▼参考となる過去問はこちら▼
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