
「必修の勉強法はありますか?」
よく尋ねられる質問です。
個人的には、時期によって言い方を変えていますが、基本的に必修の勉強法は無いと思います。
言い方がきつくなるかもしれないので、落ち込みたくない方はここでストップ。
今回は、よくある質問の中でも必修についての考え方をお話したいと思います。
目次
必修に勉強法がない理由

改めて、必修に勉強法はないと思います。
必修はあらゆる科目に含まれている
なぜかというと、必修の内容は”一度は勉強したであろう基礎系科目や臨床系科目”に含まれているからです。
たとえば、下の問題。
111A2
歯肉炎と歯周炎を鑑別する所見はどれか。1つ選べ。
a 歯の動揺
b ポケット形成
c 歯根膜腔の拡大
d アタッチメントロス
e プロービング時の出血
これは、必修ならではというより、単純に歯周病学の問題として受け取れます。
ほかにも
110A1
細菌の細胞壁分解能を有するのはどれか。1つ選べ。
a アミラーゼ
b リゾチーム
c ディフェンシン
d ラクトフェリン
e ペルオキシダーゼ
これも、必修というより単に生化学や微生物学の問題として捉えることができます。
みなさんも薄々気づいていると思いますが、多くの必修の問題が、一度は勉強したであろう基礎系科目や臨床系科目のなかに含まれています。
よくよく考えてみると、大学の授業で独立した科目として必修が存在しないことも納得かと思います。
参考までに、一部、歯科医師国家試験の出題基準を抜粋しておきます。
「必修の基本的事項」は「歯科医師として必ず具有すべき基本的最低限度の知識及び技能」であることから、歯科医師として必要な基本的知識及び技能(土台となる知識及び技能)とする。「歯科医学総論」と「歯科医学各論」は、「必修の基本的事項」を土台として構成される、歯科医師として必要な専門的・臨床的知識及び技能とする。このような関係性を基本とする
というわけで、あらゆる科目の土台として含まれている必修。
これで、必修には特別な勉強法がないということが、なんとなくわかっていただけたのではないでしょうか。
必修ができないのではなくて、土台ができていない。だから必修ができない、ということかもしれません。
一部例外もあります
さきほど、必修の勉強法はないとお伝えしました。
しかし、一部だけ、必修ならではの範囲もあると思います。
それは、医療面接や医の倫理などです。
とはいえ、これらの内容で問題を落とすこともないので心配はないかと。解釈的態度や支持的態度はわかりずらいな〜と思いますけど。
必修はネガティブマーケティング
とはいったものの、なぜ「必修」と意識する人が多いのでしょうか。
それは、
・正答率80%以上の基準
×
・学習の土台が仕上がってない
×
・商品として存在している
これらのことがかけ合わさって、必要以上に意識されることが原因かと思います。
多くの人が、土台なんて最後まで完成しないです。そして、正答率80%以上という絶対評価であり、プレッシャー。さらに、極めつけが必修を題材とした商品です。商品が存在することで、無意識の不安が顕在化します。
これらが重なり合うことで、心配にならない人が珍しい。不安の感情を埋め合わせることも大事ですが、理性を使って問題の本質を見分けることも大事です。
というわけで、いったんまとめます。
・必修の問題を確認すると、あらゆる科目ですでに勉強済み
・強いて言うと、必修ならではの内容は医療面接など
・上記2点の理由から、特別に必修の勉強法はない
歯科医師国家試験の作成者をイメージする

ここからは国家試験側をイメージするお話しです。
歯科医師国家試験を設計するのはキャリアを積み上げた人間
歯科医師国家試験を作成しているのは当たり前ですが人です。
そして、その人は、歯学界では中堅以上の重鎮であることは間違いないと思います。年齢は50〜60代といったところでしょうか。
そこで想像してみてください。
・歯学で長いキャリアを積んでいる。
・部下や家族をもち、若い人以上にさまざまな人間関係の中に身を置く。
・自分の研究も落ち着いてくる
・収入や自己承認は満たされ、ワークとライフのバランスが整ってくる。
・立場的には指導側で後世をどう育ていくかを考える年齢。
・若い人に比べて、肉体的に生理活性物質や神経伝達物質も多くない。(賢者モード感)
このように経歴を積み上げた教授クラスの人たちが国家試験に関わる。
人間として円熟期にいる人たちが国家試験を設計する時に、必修領域だけを姑息に勉強した人間を合格させたいと思うでしょうか。
自分が60歳ぐらいになったことをイメージすると、テクニックどうこうで乗り越えようとする人は合格させたくないです。
歯学をしっかりと積み上げた人を合格させたい、賢者モードが故にそんな高尚な思いがオチでしょう。
たとえ、本人が若い時に小手先に頼っていたとしても、人は自分が若かりしころなんて忘れます。
登院実習を思い出してください。最初はみんなできないのに、謎に厳しい指導医とかいませんでした?
失礼、余談でした。(笑)
正答率80%以上という試験設計
仮に、必修が科目として独立しているタイプで、必修領域ならではの勉強法があると仮定します。
もし、そうだとしたら、正答率80%は無駄に厳しすぎます。正当性がなさすぎる。
その点からしても、必修はあらゆる科目に包括されていて、基本的な内容ということが考えられます。
というわけで改めて確認します。
・試験作成者はこれからの歯学界のこと考える教授レベルの人
・基本的な内容だからこそ正答率80%以上の試験設計
・上記2点から、必修に特別な勉強法はないと考えられる
では、どうすればいい?

とはいっても、どうすればいいのか。
眼の前の課題に取り組む
答えはシンプルです。
それは、目の前に与えられた大学の講義や資料、課題をしっかり丁寧に取り組むということです。
正答率が80%以上の試験設計。
改めて考えても、この設計自体が「表面的なところだけをすくって勉強していれば到達するよ」とは意味していないと思います。
やっぱり、「普通にマメに勉強している」、または「内容をしっかり理解している」というレベルであれば、当たり前のように点数は取れますよ〜、という意図ではないでしょうか。
もし、全国模試などで必修領域が8割到達したり、しなかったりしている場合は、おそらくマメさが足りないです。
これは、多くの学生をみてきた個人的な経験側ですが、総合点450ぐらいになると必修は8割後半から9割はいくと思います。ちょっとしたミスで8割前半といったところでしょうか。
つまり、土台がしっかりしているので、必修は落とさないということです。
おそらく、苦手科目も少なく、円グラフの成績表もきれいな円に近いと思います。
大学の入学当初は偏差値の偏りはあったかもしれません。しかし、どこの大学も合格率0%はありません。どんな状況であれ、合格している人はいる。
それを考えると、与えられた環境や内容で、自身の問題点をこまめに明確化して、対策を打つ。
これが、必修領域を乗り越える方法ではないでしょうか。
問題点の明確化
すいません。少し抽象的な話しが続きました。
もう少し具体的な話を。
例えば、先程の問題。
110A1
細菌の細胞壁分解能を有するのはどれか。1つ選べ。
a アミラーゼ
b リゾチーム
c ディフェンシン
d ラクトフェリン
e ペルオキシダーゼ
この問題ができなかったとします。
そしたら、単純にこの問題単発がわかっていないと認識しまくることです。
問題点を明確にしない人は、この問題ができないと、生化学ができない、もしくは微生物学できない、ひいては基礎系科目ができないと『大枠に戻って勘違い』します。
違います。
単純に『細菌の細胞壁分解能を持つ酵素がわかっていない』だけです。
なので問題点を明確化したら、それを覚える。
ひたすらこれの繰り返しです。
成績表が配られる時は、科目別で点数が出せれたりするので、間違ったところが明確化されずに、なんとなくぼやっと〇〇科目できないんだよな〜と思ってしまいます。
細かく細かく分解して、補填していく。
忘れたら、また補填する。
それを繰り返してください。
大枠に戻って学習することが、効果的なのは初学者です。
そもそも、自然界は人間に合わせてカテゴライズなんかされてないです。だた、事象として存在するだけ。優劣もないです。
テストも同じです。先程の例をあげると、単に『細菌の細胞壁分解能を持つ酵素』という事象を知らなかっただけです。
なので、知らなかったら、知ってください。
そこを基礎系科目ができないというのは行き過ぎです。
問題点の明確化。
「ぼやっと〇〇科目できないんだよな〜病」には気をつけてください。
まとめは”自灯明”
というわけで、まとめます。
・必修に勉強法はない。なぜなら、必修領域はあらゆる科目で学習済み
・解決策は”細かく”問題点を明確にしてコツコツ補填していく
最初に、時期によって伝える言葉をかえると言いました。
もし、「1月に必修の勉強法はどうしたらいいですか?」
と相談されたら、「必修としてまとまっている参考書を使ってみてはどうか?」と伝えます。
その後、いままで勉強してきたことの重要性など、いろいろ伝えることになりますが…。しかし、これは、相手の精神衛生を思って伝えることが多いです。直前で不安になっているところを、「必修の対策はない」はあまりにも酷なので。
ですが、ブレずに進んでいく。これがやはり原則です。
というわけで、最後は謎に禅の言葉で締めくくりたいと思います。
ー「自灯明」ー
本当に自分を支えるのは自分。外部メディアに流されず、自分で自分自身を照らし、自らの道を進んでください。
一応、歯科医師国家試験の出題基準のリンクも貼っておきます。
ーここからは読まなくでも大丈夫です。ー
たまに、潔癖なまでに、歯科医師国家試験の出題基準を意識する人がいますが、参考までにという具合で、距離を取った方がいいと思います。
なぜかというと、厚生労働省といった行政の方々は言語を扱うお仕事です。
言語を扱うプロだからこそ、「〇〇を出題する。」みたいな断言的な発言はしません。
たとえば、法律なんかは、細かいことは書かず「〜に関わる一切のこと」といった表現をよく使います。それは、例外があった時でも、文章を作成した側に、釈明する余地を与えるためだからです。
なので、出題範囲に記載されいる内容だって明言はせず、解釈の余地がある書き方をしています。
そもそも、出題基準をこまめに見てた人で、合格した人は全体の何%なんでしょうか。
自分が現役の時に出題基準を見てた人は、周りに誰もいなかったです。合格するのは国試マニアではないです。
出題基準がどうのこうの言っているのは、教える立場の人だけでしょう。それは、「教えてないじゃないか!!聞いてない!」といった批判を避けるためにしか思えないですね…。
安心してください。大学はしっかり出題基準を網羅してカリキュラムを組んでいます。
すいません、余談でした。(笑)
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